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第33話

「ほう……昨日、娘と話しているのを見たのだ」 「あーぁ……」 「あの娘は誰だ?何の話をしていた?」  そう問うと、ルイは一瞬目を泳がせた。 「あの者は、宮中で働く侍女だそうです。私も知らない娘です」 「知らない?」  アンドレイが怪訝な顔を見せる。知らない娘と、あの様に話をするのか。 「はい。初めて見る娘でした。大した話ではありませんので……」 「適当に申すな。私に嘘は吐くでないぞ」 「それは……」 「何の話をしていた?大人しく白状せよ」  ルイは言い辛そうにしていたが、観念した様に口を開いた。 「はい……私のことを……その……慕っていると……」  アンドレイは、一瞬時が止まった様な気がした。薄々はその様なことだろうとは感じていたが、本当にそうだとは……。 「ほう、そうか!それは良かったではないか!」  そして、精一杯の空元気でルイに言葉をかけた。本当は半ば自棄になっていたが、そのことに気付かぬふりをして。 ルイを、あの娘に取られたくない。本気でそう思った。 「して、そなたはどの様に答えたのだ?」 「それは……お断りしました。気持ちは嬉しいですが、応えることができないと」  アンドレイは驚いた。これから相手と仲良くなっていくこともできるだろうに、断るとは思わなかった。 「何故だ?何故断ったりしたのだ」 「交際しながら距離を縮めることもできるかもしれません。しかし、私は好きではないお相手と付き合うことはできないですから」 「もしかして……やはり、好いている娘がいるのか」  内心緊張しながら聞いてみる。

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