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第34話
「さぁ、どうでしょう。さようなまでに気になるのですか?」
ルイの表情が一変し、夜の秘事の際のような艶っぽい顔を見せた。
普段、ルイが日中にこの様な顔を見せたことはほとんどない。
「ル、ルイ?」
アンドレイはルイの変化に焦る。
「王子様は、そんなに私のことが気になりますか?私が女子と恋仲になることに、関心がおありなんですか?」
ルイが、座るアンドレイにズイと顔を近づけてきた。
体を重ねたこともある相手ではあるものの、こういった状況は初めてだ。
だから、いささか恐怖さえ感じる。
「いや、それは……」
アンドレイはたじたじになってしまう。ルイの変わりように頭がついていかない。
「どうなんです?私の色恋が気になりますか」
至近距離でルイに見つめられ、逃げ場を失ったような気持ちになる。心臓が忙しく鳴りどうしようもない。
「断じてそんなことはない!」
顔を真っ赤にして答えた。すると、ルイは探るように見つめた後で、顔を離した。
「ほぅ、さようですか。まぁ、よろしいでしょう。少し、からかっただけですよ」
ルイは感情の見えない笑顔を向けてくる。
「か、からかっただと?」
「はい」
なおもルイの笑顔は感情が見えない。
「私をからかうとは無礼だぞ」
「そうですね。申し訳ございません。私もふざけが過ぎたようです」
すると、ルイはアンドレイの額にキスを落とした。
「うわっ、何をする!」
「私は、他の誰のものにもなりませんよ」
そんなことを言うものだから、アンドレイの胸は忙しなく鼓動した。
どういう意味だと聞いても、上手くはぐらかされてしまう。
ルイが何を考えているのか分からず、アンドレイの心はモヤモヤする。
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