34 / 82

第34話

「さぁ、どうでしょう。さようなまでに気になるのですか?」  ルイの表情が一変し、夜の秘事の際のような艶っぽい顔を見せた。 普段、ルイが日中にこの様な顔を見せたことはほとんどない。 「ル、ルイ?」  アンドレイはルイの変化に焦る。 「王子様は、そんなに私のことが気になりますか?私が女子と恋仲になることに、関心がおありなんですか?」  ルイが、座るアンドレイにズイと顔を近づけてきた。  体を重ねたこともある相手ではあるものの、こういった状況は初めてだ。  だから、いささか恐怖さえ感じる。 「いや、それは……」  アンドレイはたじたじになってしまう。ルイの変わりように頭がついていかない。 「どうなんです?私の色恋が気になりますか」  至近距離でルイに見つめられ、逃げ場を失ったような気持ちになる。心臓が忙しく鳴りどうしようもない。 「断じてそんなことはない!」  顔を真っ赤にして答えた。すると、ルイは探るように見つめた後で、顔を離した。 「ほぅ、さようですか。まぁ、よろしいでしょう。少し、からかっただけですよ」  ルイは感情の見えない笑顔を向けてくる。 「か、からかっただと?」 「はい」  なおもルイの笑顔は感情が見えない。 「私をからかうとは無礼だぞ」 「そうですね。申し訳ございません。私もふざけが過ぎたようです」  すると、ルイはアンドレイの額にキスを落とした。 「うわっ、何をする!」 「私は、他の誰のものにもなりませんよ」  そんなことを言うものだから、アンドレイの胸は忙しなく鼓動した。 どういう意味だと聞いても、上手くはぐらかされてしまう。 ルイが何を考えているのか分からず、アンドレイの心はモヤモヤする。

ともだちにシェアしよう!