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第36話

 次にアンドレイが目を覚ました時には、ベッドの上にいた。 「ここは……?」  何となく呟くと、「宮中の医院です」との声がした。聞き馴染んだ声だ。 「ルイ……?」  ベッドに横たわるアンドレイの傍に、心配そうな顔のルイがいた。 「王子様、大丈夫でございますか!?」  ルイは今にも泣きだしそうだ。  あまりはっきりとしない思考で、自身が刺されたことをアンドレイは思い出す。 「あぁ。何とか生きておる。まさか、一人でいる時に刺されるとはな。しかし、どうやって私はここへ?」  そうだ。あまり人も来ないような場所で倒れたのだ。一体どうやってここまで来たというのだろう。 「私が、背負ってお運びしました。たまたま庭園を管理する者が王子様を発見し、伝えてくれたのです」 「そうだったか……すまぬな、ルイ」  緩い動きでルイの方に手を伸ばすと、ルイはアンドレイの手を握り返してくれた。 「申し訳ございません、王子様っ。またしても、お守りできずに危険な目に遭わせてしまいました」 「気にするな。仕方ないではないか。そなたは用があったのだから」  ルイを宥めるように言うと、ルイはアンドレイの手を握る力をより一層強くした。 「いいえ。私は金輪際、王子様の傍を片時も離れてはいけないと悟りました」 「おいおい。それでは互いに息が詰まるではないか」  アンドレイが苦笑すると、生真面目な顔をしたルイが言った。 「王子様は、私と常に一緒にいたいとは思ってくださらないのですか?」 「えっ、えっ?」  アンドレイは腹の傷が痛むのも忘れて、大いに動揺してしまう。 「もう、私は我慢ができません」 「どうしたんだ、一体」 「あなたが好きです。臣下としてだけでなく、あなた様を愛しています。ずっと、共に生きていきたいのです」 「ルイ……」  アンドレイは、まるで夢を見ているような心持ちになった。

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