36 / 82
第36話
次にアンドレイが目を覚ました時には、ベッドの上にいた。
「ここは……?」
何となく呟くと、「宮中の医院です」との声がした。聞き馴染んだ声だ。
「ルイ……?」
ベッドに横たわるアンドレイの傍に、心配そうな顔のルイがいた。
「王子様、大丈夫でございますか!?」
ルイは今にも泣きだしそうだ。
あまりはっきりとしない思考で、自身が刺されたことをアンドレイは思い出す。
「あぁ。何とか生きておる。まさか、一人でいる時に刺されるとはな。しかし、どうやって私はここへ?」
そうだ。あまり人も来ないような場所で倒れたのだ。一体どうやってここまで来たというのだろう。
「私が、背負ってお運びしました。たまたま庭園を管理する者が王子様を発見し、伝えてくれたのです」
「そうだったか……すまぬな、ルイ」
緩い動きでルイの方に手を伸ばすと、ルイはアンドレイの手を握り返してくれた。
「申し訳ございません、王子様っ。またしても、お守りできずに危険な目に遭わせてしまいました」
「気にするな。仕方ないではないか。そなたは用があったのだから」
ルイを宥めるように言うと、ルイはアンドレイの手を握る力をより一層強くした。
「いいえ。私は金輪際、王子様の傍を片時も離れてはいけないと悟りました」
「おいおい。それでは互いに息が詰まるではないか」
アンドレイが苦笑すると、生真面目な顔をしたルイが言った。
「王子様は、私と常に一緒にいたいとは思ってくださらないのですか?」
「えっ、えっ?」
アンドレイは腹の傷が痛むのも忘れて、大いに動揺してしまう。
「もう、私は我慢ができません」
「どうしたんだ、一体」
「あなたが好きです。臣下としてだけでなく、あなた様を愛しています。ずっと、共に生きていきたいのです」
「ルイ……」
アンドレイは、まるで夢を見ているような心持ちになった。
ともだちにシェアしよう!