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第48話
「アンドレイ。どうじゃ、そろそろ結婚の相手を決める頃ではないか?」
一月後、父王に呼ばれたアンドレイは、投げかけられた言葉に呆然とした。
「王様……。それは一体、どういったことでしょうか」
「分からんのか?お前も、後を継ぐ前に妃を娶らねばなるまい」
「いえ、まだ早いかと存じますが……」
「早いことはない。いずれ王となるなら、即位する前に婚姻する事例が多い」
「しかし……」
「何も、直ぐに婚姻しろと言っているのではない。相手を決めておけば安心だろうと言っておるのだ」
「ですが……私は……」
何か言いたかったが、言葉に詰まってしまう。
「とにかく、そのつもりでいよ。私が姫君を見付けてやるから」
自分にはルイがいると、いっそのこと言ってしまいたかった。しかし、それはできない。絶対に。
ルイと離されてしまうわけにはいかないのだ。
「はい……」
何も反論できず、父王のもとを辞去した。父王の言葉は、至極当然のことだ。未来の国王に、今のうちに后を選定しておきたいと考えるのは分かる。
ただ、アンドレイの心に暗い影を落とした。
『ルイ……マズいぞ……』
二人の危機は、思ったよりも早く訪れそうだ。
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