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第49話

それから、しばらく経たないうちにアンドレイは父王に呼ばれた。 「王様が?」  聞き返すと、傍らのルイが頷いた。 「はい。執務室に来るようにとの仰せです」 「何であろう……分かった。すぐに参る」  なぜだろう。嫌な予感する。忙しく胸を鼓動させ、アンドレイは父王の元に向かった。 「何でしょうか、王様」  執務室に入るなり、緊張感が漂う。緊張しているのは自分だけだろうか。 「お前は、フィリップの息子と恋仲なのか?」  低く、感情を抑えたような声だった。怒りを耐えているような。  一瞬、何も考えられなくなる。 「そ、それはどういうことでしょう」 「噂になっているのだ。お前がルイとできている、とな」 「う。噂に?」  万事休すだ。どうすべきか、必死に考えた。しかしなぜ、噂などになったのだろう。  「宮中に広まってきている。どうなんだ。違うのか?」  否定すれば、その場を切り抜けられるかもしれない しかし、こんなことがこれからも堂々巡りする可能性もあるだろう。 「確かに、ルイとは子供の頃から仲良くしています。それだけです」 「それだけ?では、なぜ噂になったのだ。まぁ、出どころなど分かるはずないがな」 「私にも、分かりません。どうか、お気になさらぬよう」 「そうはいかん。そうだ、お前の婚姻の件も考えておる。公爵家の娘はどうだ。私も父親と親しくしていて、美しい姫君だぞ」 「王子として相応の家柄の娘と婚姻し世継ぎをもうけることが責務だと、分かっております」 「そうであろう」  父王は当然だというように頷いた。 「しかし、私は姫君を娶るわけにはいきません」  きっぱりと告げると、父王は苛つきを見せたように見える。 「一体、何だというのだ!やはり、ルイがいるからか?やはりそうなのか」  怒りに震えた父王は、声を荒らげた。すると 父王は呻き心臓を抑え苦しみ出してしまう。 「うっ……」 「王様っ、王様っ!」  アンドレイは直ぐに父親のもとに近寄った。 「私の……目の黒いうちは許さないぞ……」  苦しげに言いながら、父王は意識を手放した。 「誰か!誰か主治医を呼べ!」  アンドレイの声が響き渡る。

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