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第51話

父王の容態は思わしくなく、政務を執り行うことができなくなった。これにより、病床の父王からの言い付けで、アンドレイが代理執政をすることになった。要するに、父王の代わりに政務を執り行うということだ。  執務の一貫として、庶民の状況を知るために市中へとルイを伴い視察に行くことにした。  宮廷で着ている服だと目立ってしまうため、アンドレイもルイも庶民と変わらない服に着替えて城を出た。  馬を駆る方法もあったが、敢えて徒歩で向かう。 「私はこれまで、王子としての教育を受けてきたが、庶民の暮らしに触れることはなかったかもしれないな」  目的地の街への道中、アンドレイはぽつりと呟いた。 「そうかもしれませんが、これから庶民がどの様な暮らしをしているか、街がどうなっているか知っていけば良いのではないですか?」 「確かにな。臣下からの報告を聞いているだけでは実際のところは分からない。この目で確かめて民の暮らしを知らなければ、民に寄り添うことはできないからな」  だから視察に行くのだ。父王も、かつてはたまに城を空けて視察に行っていたものだ。

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