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第55話
「美味かったか?」
アンドレイが問うと、ロビーは「うん」と少し恥ずかしそうに頷いた。
料金をルイに払わせて店を出ると、ロビーが畏まり頭を下げた。
「あ、ありがとうございました。このご恩は、忘れません」
「良いのだ。今後、そなたらの暮らしが上向くように政策を講じねばと思っている。そなたも今少し辛抱してくれ」
「……でも、どうやって?」
ロビーは訝し気に見つめてきた。
「そうだな。これから宮廷に戻り、検討する。きっと、そなたたちに苦しい思いをさせぬようにするゆえ、待っていて欲しい」
「わ、分かりました。本当に、ありがとうございました」
ロビーは深く頭を下げると、どこかへと駆けて行ってしまった。
「どこへ行ってしまったのでしょう」
ルイが問う。
「さぁな。さて、我らは帰るとするか。そろそろ日も暮れる。あ、そうだ。あの者の街に炊き出しをすることと、国で蓄えている食料を分け与える調整をしてくれ」
「はい。かしこまりました」
「あぁ、頼む。いつも、ありがとうな」
帰りの道中にアンドレイが何気なく言うと、ルイは瞬きをした。
「王子様……?どうしたのですか?」
「え、いや。たまには、感謝くらい伝えねばと思ったのだ」
「私は、役目を果たしているだけでございます。王子様のお役に立ちたいですから」
「それが有り難いのだ。言いたい時に言わねば、後悔することもあるからな」
すると、またルイが目を瞬かせた。
「ご心配いりません、王子様。私は王子様が鬱陶しく感じてもずっと傍におりますよ」
「本当か?」
少しだけ半信半疑で聞くと、「もちろんです」
とルイは頬に口付けしてきた。
「なっ、何をするっ!誰かに見られたらどうするのだ」
アンドレイの頬は一気に真っ赤になってしまう。
「申し訳ありません。つい、したくなってしまいました」
「馬鹿……」
アンドレイは照れながらも、二人は寄り添って歩いた。
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