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第57話

七年の月日が流れた。 二五歳となったアンドレイは、王として政務を執り行っている。  父王は三年前に病が悪化し、主治医の懸命な治療の甲斐なく逝去した。 アンドレイは父王の後を継ぎ二二歳で即位したのだ。  最初は不安で胸が押し潰されそうな日々だったが、協力的な重臣たちが支えてきてくれた。  そして、アンドレイの傍らにはルイがいる。 「王様、おはようございます。お目覚めはいかがですか?」  ルイの笑顔を見るだけで心が安らぐ。目覚めはいいに決まっている。 「おはよう。最高な朝だ」  そう告げると、嬉しげに額へと口付けをしてきた。  ルイが戻ってきたのも、三年前のことだった。 「今も、そなたが次の日にはいなくなってしまうのではないかと不安になる。そなたの姿を見ると、安心するのだ」 「私はここにおりますよ。ナンザには参りましたが、先王様がお亡くなりになる前に私を呼び戻してくださったのです。そのお陰で、私は王様のお傍にこうしていられます」  父王がルイを呼び戻した理由は聞けていない。父王は、命令を出して直ぐに亡くなってしまったからだ。  もしかしたら、自身の最期を悟りアンドレイからルイを離したことを後悔したのかもしれない。ルイが傍にいる方が、アンドレイは幸せなのだと思ったのかは分からないが。 「そうだったな」  アンドレイは、今日初めて自分から口付けをした。 「そなたのいない日々など、二度とごめんだ」 「私でもです、王様。王様と離れている間、どれほどに苦しかったことか。随分と時は経ちましたが、今思い起こしても狂いそうなほどです」 「同感だ」  アンドレイは頷いた。ルイのいない間、自分の半分を失ったような心持ちがした。何とか父王の代わりになれるようにと責務だけに没頭した。いずれ帰ってくると言っていた、ルイの言葉を信じて。言葉通りに、四年後にルイは帰ってきた。アンドレイが王へと即位するとほぼ同時に。  父王を天国に送り、慌ただしい中で即位の準備をしていた頃、ルイはアンドレイの目の前に現れたのだ。その時のことを、はっきりとアンドレイは覚えている。

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