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第60話
その後、城の一室に酒と肴を用意させ、クラウド王と飲み直した。
「本日は素晴らしい席をありがとうございました。料理も美味しかったですし、大変に楽しませていただきました」
「お気に召していただけたようで、幸いです。本日は、何か私にお話がおありなのでしょうか」
尋ねると、クラウド王がワインを一口飲み答える。
「単刀直入に申し上げます。私のものになってください」
「はっ?」
アンドレイは思わず固まってしまった。
「私は、あなたが欲しい。実は、初めてお会いした時から手にしたいと思ってきたのです」
「え、王様には王妃様がいらっしゃるではありませんか」
そう。クラウド王は四年前ほどに婚姻をしたと聞いている。
それなのに、自分のものになれとは一体どういうことだろう。
「そうですが、私はあなたのその美貌に惹かれたのです」
「王様……」
その様なことを言われても仕方ない。クラウド王の気持ちを受け入れるわけにはいかないのだ。
「どうでしょう。国を統一して、共に治めるというのは」
「そ、それは……承服いたしかねます。我が国は我が国でやっておりますので……」
「なぜ?」
「なぜって……一国に王は二人も必要ないでしょう」
『あなたには、私の補佐をして欲しい』
つまりは、クラウドがそのまま王になるということか。
『クラウド王が、王として統治なさるのですか?』
領土を拡げたいということか。何て勝手な言い分だ。
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