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第64話

「一目見た時から我が物にしたいと願っていたのだ。どれほどまでに待ちわびたと思っている。どんな手を使ってでも、そなたをこの手中に収めてみせる」  そんなことを言いながら、クラウド王はアンドレイの服を脱がし始める。 「やめろっ!何をする!」  ルイとは数え切れないほどに体を重ねてきたが、他国の王から辱しめを受けるとは思ってもみなかった。死んでしまいたい。涙がとめどなく溢れてくる。それでも、アンドレイはできる限り抵抗を試みた。  暴れるだけ暴れて、止むを得ないと考え寝台に乗っかってくるクラウド王の腹を、拳で殴りつけた。すると、思いの外効いたらしくクラウド王は腹を抱えて蹲(うずくま)った。 「おのれ……」  目だけは、こちらを狼のように睨み据えている。  クラウド王は、しばらくして腹を摩(さす)りながら寝台を降り「ちょっと待っていろ」と言い残し部屋を出ていってしまった。彼の出ていった部屋の外では、鍵がかけられる音がする。 『閉じ込められた……』  アンドレイは絶望感に苛まれた。  この様な事態になり情けない限りだが、誰か助けに来てくれるだろうか。ここに連れてこられたと、気付いてくれただろうか。 「ルイ……」  またしても、アンドレイは愛しい男の名を呼ぶ。昨日も見たルイの顔を思い出すと、自然と涙が零れた。  絶対に、このままクラウド王の手籠めになどされたくない。生きて、ここを出なければならない。自国に戻って、ルイの顔を見るのだ。

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