65 / 82

第65話

  ルイのことを思い浮かべながら悲壮な気持ちで寝台で伏せっていると、クラウド王が戻ってきた。 「さぁ、アンドレイ王。お前にはこれを着けてもらおう」  クラウド王が見せてきたのは、首輪だった。 「私は、犬か何かですか?」  まさか、自分を“飼う”とでもいうのだろうか。 「心外だな。そんなことはない。私は、お前と一緒にいたいだけだ」  そう言うと、クラウド王はアンドレイの首に黒い輪を取り付けた。 「やめろっ!」  アンドレイは激しく抵抗したが、体躯の良いクラウド王とは力の差で敵わなかった。  そして、クラウド王は寝台とアンドレイの首輪を鎖で繋いだ。  王たる者がこんな姿になり果てて、悔しくて涙が出る。この姿を見たら、自国の民たちはどう思うだろう。失望し、『こんな王ならいらぬ』と言うだろうか。それとも、嘲笑するか。 「この様なことをして、ただで済むと思うな!」  アンドレイは、涙目で思い切りクラウド王を睨んだ。  するとクラウド王は、右の口角を上げた。 「ふふっ。まぁそう吠えるな。今日からお前は私のもの。ラティーナ国もお前も、私がもらう」 「そんな好き勝手にはさせない!」  精一杯反抗すると、クラウド王の平手打ちが飛んできた。重い一発で、非常に痛い。咄嗟にアンドレイは打たれた頬を手で抑えた。 「何をする……」 「大人しくするのだ。ここへは誰も来ることはできない。お前の“恋しい男”もな」  寝台に首輪で繋がれたアンドレイを、クラウド王は獣のような目で見下ろしてきた。   アンドレイにのしかかり、両腕を押さえつける。そして、唇を合わせてきた。 「んっ……」  逃れたくてどれだけ足掻いても、無駄な抵抗だった。 「“彼”のことなど、忘れさせてやる。私がいなければ生きていけないくらいにしてやるから、喜べ」 「そうなるくらいなら、死んだほうがマシだっ!」  アンドレイは傲慢に見下ろしてくる男をきつく睨む。

ともだちにシェアしよう!