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第66話

「ははっ、威勢だけはいいのだな。可愛いぞ」 「王妃様はどうする気だ!」 「あぁ。彼女のことは何とも?これまで通りに王妃の座にいてもらうつもりだ。別れはしない。最も彼女に愛はないが、別れると問題があるんでな」  クラウド王はまた、右の口角を上げた。つまり、簡単に王妃を廃することはできないということか。しかしそれでも、“傍妾”としてアンドレイが欲しいということだろう。  アンドレイは絶句する。 「……首輪を外せ!私を直ぐに解き放て!」 「それはできぬ。なんなら、腕や足も拘束するか?」  クラウド王が、アンドレイの両腕をきつく押さえつけた。とめどなくアンドレイの頬から涙が伝う。 『ルイ!!早く来い!!』  この言葉だけを、心の中で必死に叫んだ。   それから数日、アンドレイは自由を奪われた。自分の意思で行動することを許されず、一日の大半を寝台の上で過ごす。  太陽の高い間はすることもなく、夜にはクラウド王に蹂躙されるだけだった。アンドレイは時が経つにつれ諦めを覚え、精神を蝕んでいく。 『もうどうにでもなれ』  そんな風に考えていた四日目の昼下がり、何やら外が騒がしいことに気付いた。アンドレイはここに来てまだ四日だが、身も心もボロボロになっていた。 『何だ?何が起こったのだ?』  ぐったりと寝台に横たわり、外の物音を聞く。虚ろな意識ながら、大勢の人間が押し寄せてきたように聞こえる。 『まさか、な……』  僅かな思考能力で、自国の兵が助けに来てくれたのだろうかと考えた。そうだったらいいなとアンドレイも思うが『そんなことないだろう』と考えを自身で打ち消した。 自分がどこの部屋に押し込められているのかは分からないが、兵士同士が戦っている物音や声が聞こえている。  段々と、その物音は近付いてきているようだ。バタバタと、こちらに走ってくる音が聞こえる。

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