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第72話
後日の昼過ぎに、執務室で訴えが記された書類の数々を読んでいたところ、ルイがやってきた。
「どうした」
「はい。ウルバヌス国について情報が入りました」
「何?ウルバヌスで何かあったのか?」
ルイによると、アンドレイがクラウド王の城を脱出した後に、彼の王妃に隣国の王であるアンドレイを攫(さら)い、挙句に監禁したことが知られたらしい。
そして、側室にしようとしていたことも発覚し、大いに怒ったという。側室を置くことは国法で認められているが、クラウド王には妃は王妃しかいない。そこで、あろうことか女でもなく男を側室にしようとしたことが許せなかったのだ。
王妃はウルバヌス国の王室にも劣らぬ名家の子女であり、王妃の父親は国で最高位の官僚だ。王室に対しても、大きな影響力を持っている。王妃の父親が王室までも牛耳っているとも言えるだろう。
そこで、今回の一件により父親が重臣としての地位から退くと言っているというのだ。クラウド王はアンドレイを側室にすることに失敗はしたが、嘆かわしく思ったのだろう。
それだけでなく、王妃自身も実家に帰ると言い出したという。
さすがに慌てたクラウド王は、王妃や王妃の父親に謝罪して事なきを得たらしい。
ウルバヌス国の中でも、あまりおおごとにはならなかったようだ。
「王様、クラウド王より書状が届いております」
ルイから差し出された書状を受け取る。書状の中身を読んでみると、アンドレイに対する謝罪が書かれていた。
『ただあなたに惹かれてしてしまったことでした。けれど、今後は一切手出しはいたしません。誠に申し訳ございませんでした。
許していただけるなら、これからもこれまでと同様に友好関係を築いて参りたい所存です』
見初めてくれたこと自体は、嬉しくないわけではない。
しかし、自分たちは男同士でありどちらも国を統べる王だ。
例えアンドレイがクラウド王に気持ちを向けたとしても、添えるわけがない。
アンドレイは、クラウド王に自身の王妃を大切にして欲しいと願う。
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