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第74話
結婚式の夜は、公爵邸に泊まらせてもらうことになった。
「ユーリ様、お綺麗でしたね」
長椅子でくつろいでいると、ルイが言う。
「そうだろ?私の妹だからな」
得意げに言うと、ルイはくすりと笑った。
「えぇ。王様が、一番お綺麗です」
ルイの手が、アンドレイの頬に伸びる。
「そなたが今直ぐ欲しい」
アンドレイが、ルイの服の袖口を掴み訴えた。
「私に欲情したのですか?」
ルイが頬を撫でてくる。
「私は、いつでもそなたが欲しい」
「それは嬉しいですね。ですが、ここは公爵様の御屋敷ですし……」
「それはそうだが……私は我慢できぬ。少しだけならいいだろ?」
アンドレイはルイの服を掴み、引き寄せた。
すると、勢い余ったルイは体勢を崩しアンドレイに伸し掛かり互いの唇が重なった。
「ん……」
ルイはアンドレイの首に腕を回し、口付けをそのままに押し倒した。
「私に火を付けましたね?」
「何でもいいから、早くしてくれ」
アンドレイは切実に懇願した。自身の中心が、既に窮屈そうにしている。
ルイがそこに手を伸ばして、弄ってきた。
「こんなにして……そんなに私が欲しいんですか?」
「そ、そうだ……悪いか」
悪態をつくと、ルイが額に口付けを落としてきた。
「いいえ。私を求めてくださるのは、凄く嬉しいです。久しくしていませんでしたし、幸せな時間を過ごしましょう」
「あ、あぁ……」
ダブレットを脱ぎ去ると、フリルのシャツに手を掛けられる。
ルイに釦(ぼたん)を外され、白いアンドレイの肌が露わになった。
上から順に下へと釦を外していくと、露わになる肌の面積も広くなる。その肌に手を当ててルイが呟く。
「このお綺麗な身肌に、あの人が触れたのですか……」
その顔は、憎しみに満ちていた。“敵”を思い出しているようだ。アンドレイを好きなように扱ったクラウド王は、ルイにとっては敵のようなものだろう。実際にアンドレイがどんなことをされたのかなど、聞いてはいない。
けれど、首輪で繋がれていたアンドレイを見ただけでも、屈辱だったのだ。
あの時、本当ならクラウド王を刺し殺してしまいたかった。とはいえ、国家の安全のためにもそれはすることができなかった。
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