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第78話

「私は、いつでも王様のお隣におります」 「あぁ」  アンドレイは頷いたが、少しだけ表情を曇らせた。ルイはその僅かな変化も見逃さない。 「どうされました?王様」 「話は変わるが、私も跡継ぎのことは心配なのだ。私はまだ若いが、妃も娶っておらぬからな。そなたさえいれば十分だが、世継ぎがいなければ王室は滅んでしまう。今でも、重臣たちが色々と言ってくるのだ」 「そう、ですよね。重臣の方々は何と?」  ルイの顔が曇る。不安で仕方がない様子だ。 「いつ王妃を迎えるのだ、世継ぎはまだかと口うるさいのだ」 「私が、王様の重荷となっているのでしょうか……」 「何を言っている。そんなことあるわけなかろう。そこで、私は世継ぎを何とかする方法を考えているのだ」  アンドレイは体を半分起こして、横を向きルイの顔をしっかりと見た。 「父上の従兄の次男に、五歳になるジョージという息子がいる」 「あぁ、少し聞いたことがございます。とても聡明だとか」 「そうだ。その子に期待できるものがある。だから、両親や本人が了承したならいずれ私の養子にもらえぬかと思っているのだ」 「なるほど……そういう案もあるのですね」 「その子も次男ゆえ、家としても問題はないと思う。世継ぎとすることを前提として、今から帝王学を学ばせれば、きっといずれは良き王となるだろう」 「そうですね」  ルイは優しく微笑んだ。 「まぁ、承諾してくれたならの話だが……」 「大丈夫ですよ。王様の御心はきっと届きます」  ルイの腕が伸びてきて、細長い指がアンドレイの髪を梳いた。 その夜は、互いに抱きしめ合い眠った。

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