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第79話
後日、アンドレイは親衛隊に配属される新入隊員の任命式に赴いた。王であるアンドレイを始め、王室を守る組織に新たに隊員を迎えるのだから当然だ。
まだ十代と思しき少年たちは、まだ正式な隊員というわけではなく、暫くはみっちりと訓練を受ける。そして、二十歳になると正式に王室の護衛に就くのだ。
「皆、我が国のために命を賭して職務に励んで欲しい」
アンドレイが挨拶をすると、二十名の新隊員たちは一斉に頭を下げた。
「では、解散!」
親衛隊長の号令と共に、新入隊員たちは散会した。
しかし、アンドレイは一人の少年に声をかけた。王が、臣下の一人に対して個人的に声をかけるのは異例かもしれない。
「少し待て」
声をかけられたことに気付いた少年は、驚きに目を見開いた。
「な、何でございましょうか、王様……」
「そなた、先ほどから私の顔をじろじろと窺っていただろう。なぜだ?」
「そ、それは……」
少年は、怯えるように目を泳がせた。
「怒っているのではない。気になっただけだ。そなただけ、他の者と明らかに私への目線が異なったからな」
「はい……。昔、粥をご馳走になった方に似ていると思ったのです。ご無礼いたしました、王様」
「ま、まさか……そなた、名は何と申す?」
アンドレイは驚いた。もしかしたら、7年前のあの日、視察に訪れた地で蹲っていたあの少年なのだろうか。
「私はロビーと申します」
「ロビー……そうだ、ロビーだ。あの時の子供はロビーといったはずだ。もしや、そなたがあのロビーなのか?」
「え、まさか……粥を馳走してくれたのは、王様だったのですか?」
ロビーも目を丸くして驚愕した。
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