欠伸をしながら笠根は俺を追い越して、教室へと続く廊下を歩いていく。 「まあ、黒りんは良く堪えたんじゃない？前から松ちゃんの事好きだったわけだし」 「あー……そうだよな……。やっぱりあれって好きだったんだよな」 「そりゃそうでしょ。気付いてないの松ちゃんだけだって」 黒島と松原は幼馴染みらしい。 らしいと言うのは俺とアイツらとの出会いは高校に入ってからのものだからだ。 ちなみに笠根は俺の幼馴染み。 俺達四人は一年から三年まで揃って同じクラスと言う気持ち悪い間柄である。 仲良くなってしまうのは悲しきかな必然で、大体を四人で過ごしてきた。 だからこそこのタイミングで勢いをつけてきた黒島には責める心を持ってしまう。 だってあと一年だぞ？ あと一年我慢すりゃ卒業だ。 せっかく今日と言う日まで目を瞑ってきたと言うのに……。 その努力を滅茶苦茶にしてくれやがって。 「にしても、どうすんだろーね？」 「何が？」 「何って来週、研修旅行じゃん」 「……あ」 そうだ。そうでした。 忘れてましたね、研修旅行……。 修学旅行というビッグイベントは二年で終え、受験生に用意されたのは研修旅行という一泊二日の小さなイベントだ。 小さなイベント……いや大きな問題だろ……。 だって俺達四人、同じ班じゃねーか！！！！ 「今から班替え……」 「いや無理でしょ」 「うっ……最後のイベントぐらい楽しく終わりたかった」 「ははは、どんまーい」 「お前も同じ班だろーが！」 それなー、と笑う笠根は完全に他人事だ。 「まあ、良いじゃん。俺達は俺達で楽しめばさ」 「…………まあ、それもそうか。悪いな、松原」 再び心で十字を切ると、本日二度目の合掌を捧げた俺だった。