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第3話
「…………奏吾、近い」
観光ガイドブックをこれでもかと力一杯握り締める松原。
その松原にピッタリ寄り添って離れない黒島。
それを見て見ぬ振りをする俺と笠根。
何だ、このカオス状態は!?
「近付かないと見えない。俺、目悪いし」
「自分の開けばいいだろ!」
「それは面倒臭い」
このやり取り後何回見ればいいんだろ?
自由行動始まって十分ぐらいしか経ってないのに、すでに三回は見たな。
「…………耐えられん」
「何がー?」
「お前はもうちょっと関心を持て!」
俺が、俺が気にし過ぎなだけなのか?これはもう日常的な光景として受け入れてやるべきなのだろうか……。
そーっと二人を盗み見た俺の視界に映り込んできたのは、松原の尻を揉む黒島の手。
…………いや、やっぱ無理。耐えられん。
「うぅ……さよなら、最後の楽しい思い出達よ」
「………………」
感傷に浸り始めた頭に、突如笠根の手が乗せられて、それはワシャワシャと髪を乱し始めた。
「わっ、ちょ、何!?」
「あは、黒りーん!自由行動終了十分前にここ集合でいい?」
まさかコイツ俺を見捨てる気か?
と危惧したのも束の間、黒島の了承の返事を聞くと笠根は俺の手を取ってその場から歩き出した。
「あ!う、裏切り者ー!」
なんて松原の悲痛の叫びを背中に受けた気がしたけど、俺の頭は見たことないぐらい活発な動きをする幼馴染みの事でいっぱいだった。
「か、笠根……?」
「言ったじゃん、俺達は俺達で楽しもうって。俺と二人じゃ不満?」
「え、いや……全然。全然!全然不満じゃない!」
思えば高校に入ってからは四人でばかり過ごしていて、笠根と二人でなんてのは中学生以来な気がする。
何かすげーテンション上がってきたかも。
「俺、お団子食べたーい」
「俺も!あ、ここも行きたかったんだけど」
広げたガイドマップを指すと笠根は笑う。
「萩って本当昔からそう言うの好きだよね。歴史的建造物」
「笑うなよ。ロマン感じるだろ?」
「はは、ロマンって。まあいいよ。その代わりお団子先ね」
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