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第4話

松原には申し訳ないけど、めちゃくちゃ楽しい。 これだよ、俺の待ってた青春は。 「萩、みたらしにする?」 「正直餡も捨てがたい」 「じゃあどっちも一本ずつ買おうよ。俺もそうするし」 「賛成!」 両手に団子を持ちながら、隣を歩く笠根を見上げる。 昔から変わらない身長差。いや昔より広がったか。結局一度も抜かせなかったな。 「笠根、ありがと」 「何がー?」 「俺、今すげー楽しい」 「……どーいたしまして」 いっつもやる気ないけど、良い奴なんだよな笠根って。 ぼーっとしてるし何考えてるか分かんないって誤解されたりもするけどさ。 でもすげー優しい奴だって俺は知ってる。やる気はないけど。 「萩、萩、団子咥えて」 「え、こう?」 「ん、そのまま」 リクエストに応えた俺に向けられる笠根のスマホ。続いて鳴ったカシャッと言うシャッター音。 「何してんの?」 「黒りんと松ちゃんに食レポ送信中」 「え、ならもっと旨そうに食えばよかった」 「リベンジする?」 「する!」 くだらない撮影会とか名物の食べ歩きとか大好きな建造物の拝覧なんかをしていたら、時間なんてあっという間に過ぎた。 いや本当あっという間に。 「そろそろ戻ろーか」 「もう終わりか……」 「楽しめた?」 「そりゃもう!って……もしかして笠根は楽しくなかった?」 「俺も楽しかったよー。こんなに二人で遊んだの久々だったしね」 「それな」 「もしかしたら最後かもしれないし」 「え…………」 「だって俺達別の大学でしょ?」 「…………」 そりゃそうなんだけど。 確かに笠根とは違う大学に行く。そっか、考えてみりゃ俺達ってずっと一緒だったから初めてバラバラになんのか。 「べ、別に最後ではないだろ。大学は違うかもだけど遊ぶとか普通に出来るし」 「えー、案外時間合わなくなるもんだよ?」 何か楽しかった気分が急降下したな。 「そ、んなの……心持ち次第だろ。会おうと思えば会えるんだよ」 「ふーん、じゃあ大学行っても萩は俺と遊んでくれんの?」 「当たり前だろ!何年の付き合いだと思ってんだよ」 「うんとね、幼稚園のお泊り会で萩がおねしょして大泣きした時からの――」 「――それは忘れろ馬鹿!」

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