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その後の諸事情3
「……まあ、そりゃ……俺モテないし」
「告白されたことないんだっけ?女子に」
わざわざ女子に、なんて強調させて言うんだから笠根のあの告白はカウント外と言うことだ。
「ないよ、悪かったな」
クスクスと笑う笠根の手には二本目の野菜ジュース。
「悪くないよ。俺は嬉しい」
「俺がモテないのが?酷いやつ」
「そうだよ、俺酷いやつなんだ。萩にはモテモテになってほしくない。萩の魅力は出来れば俺だけが知ってたい。だから誰も気付かなくていいんだ」
サラサラと流れるような言葉を浴びて、俺は呆けたように瞬きを繰り返した。それから言われた意味を理解するとともに頬は熱くなる。
「な、何だよ、それ……!恥ずかしこと言うなよ……」
「恥ずかしくないよ。本当のことだし。……照れてる?」
顔なんて見なくたって笠根が笑ってるのが分かる。だってそんな声音だ。
「照れてない!」
「――嘘。耳真っ赤」
体温が近付く気配に身体を強張らせたら、次の瞬間には耳元から「可愛い」と笠根の声が囁いた。
「や、ばか!やめろ!」
右耳を両手で押さえながら身体を捩った俺は笠根を睨むも、まるで効果はない。むしろ笠根は楽しくて仕方がないと言った様子だった。
「この前も思ったけど萩って耳弱いんだね」
この前と耳に届いた言葉に思い出すのはあの研修旅行での出来事。忘れたくても忘れられない。鮮明な記憶に触れていた耳が更に熱を持つのを感じる。
「別に弱くない!」
「そうなの?」
「そうだ!お前がエロい声出すからだ!ばか!」
「…………」
自分が失言したと気付いたのは笠根がぽかんとした顔で俺を見たから。
しまったと内心舌打ちをした。だけどそれを取り消す間もなく笠根は嬉しそうな表情を取り戻して、ずいっと身を寄せてくる。
「知らなかった。萩って俺の声好きなんだ?」
「は!?違っ、んなこと言ってないだろ!?」
「でも俺の声聞くとエロい気分になるんでしょ?」
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