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03-3.悪役令息は愛されている

 ダニエルの必死な抵抗の理由を知らないフェリクスは首筋を舐めた。  それから躊躇なくダニエルの首筋に噛みつく。 「痛っ!?」  首筋からは血が滲む。  そこはクラリッサによって治療をされた傷跡と同じ場所だった。噛み千切られるのではないかと思ってしまうほどの強さだった。ダニエルはフェリクスの手首から手を離した。 「ああっ!? なにをするんだ!」  その隙を狙っていたのだろう。  フェリクスは噛みつくのを止めると素早くズボンと下着を脱がしてしまう。そこには主張をするかのように勃起している自身が先走っていた。 「昨日、あれだけヤったのに元気だなぁ?」 「う、うるさい! バカ! 見るんじゃねえ!!」 「なんでだよ、足りなかったのは俺だけじゃなかったみたいで安心したぞ?」 「うるさい!! フェリクスと一緒にするな!」 「あはは、暴れるなよ」 「おい!? やめろって! 見るんじゃねえ!」  慣れた手つきでダニエルの両足を持ち上げる。  身体が柔らかいこともあり、つま先は頭の近くにまで来ている。その姿勢でも痛みは感じないものの、羞恥心がダニエルに襲いかかる。赤かった頬はますます赤くなっていく。抵抗をすることを許さないというかのようにフェリクスは勃起している男性器に触れる。それを優しく撫ぜる。 「この姿勢だとよく見えるだろ?」  男性器から零れる先走りを指に絡める。  それを慣れた手つきでダニエルの尻に手を回す。そして連日、使われているからなのか、少しだけ解れつつあるように見える穴に触れる。軽く触れただけでダニエルの身体は僅かに震えていた。 「恥ずかしいよな?」  問いかけるフェリクスの言葉にダニエルは頷いた。  それに満足をしたのだろうか。フェリクスは穴に指を入れる。それから前立腺を探すように動かしていく。 「なぁ、このままイったら顔にかかるんじゃねえの?」 「ひっ……! ば、ばかなことをっ」 「ダニエルならイけると思うぜ?」 「やっ! やめろって! 退け!」 「んー? 自分の顔にかけたくねえなら我慢すればいいんじゃねえの?」 「んあっ! ……この、バカ! 嫌だって、言ってえっ!」  語尾が上がってしまう。  達したばかりの身体は快楽に弱い。フェリクスは前立腺を指で潰すように刺激をすると、ダニエルは首を左右に振って拒絶をするような仕草をする。 「嫌か?」  フェリクスは優しく問いかける。  しかし、その手は止まらない。 「仕方がねえなぁ。前は弄らねえでやるよ」  男性器から手を離される。しかし、前立腺を刺激する指が一本から二本に増えた。中を掻きまわすように動いたり、前立腺を擦る刺激は強いものだった。 「ひっ、あっ!」  ダニエルはフェリクスの問いかけに応える余裕がなかった。  姿勢を戻せないようにフェリクスはダニエルの身体に体重をかける。器用に姿勢を維持しているフェリクスは楽しそうな表情をしていた。 「あっ……! んんっ……!」  嫌だと訴えるように首を左右に振っても、フェリクスの指はダニエルの身体を苛めていく。腹の奥から湧き上がるような快感は堪えられるようなものではないが、このまま、達してしまえばどうなるのか、想像をしてしまう。  自分自身の精液がかかる姿を見たくはない。  その姿を見れば、フェリクスは暴走をするのはわかりきっていった。  ダニエルは必死に快楽に抗う。それを嘲笑うかのようにフェリクスは前立腺を刺激する。強く押したり、中を掻き混ぜたりと様々な動きでダニエルを追い込んでいく。  徐々に快楽により頭の中が真っ白になっていく。  まともに考えることもできない。ただ、与えられる快楽を拒もうとするほどに身体に力が入ってしまい、刺激をまともに受け入れてしまう。 「はは、可愛いなぁ」  フェリクスはダニエルの頬にキスをする。  唇にしないのは焦らす為なのだろう。キスをするとダニエルは脱力をしてしまう。それを無条件で受けいれてしまうのは癖のようなものだとフェリクスは知っていたからこそ、抵抗をするダニエルの愛らしい姿を見る為に頬にするだけで堪えているのだろう。 「可愛い」  フェリクスの言葉にダニエルは体を震わせる。  もう首を左右に振って拒む仕草をする余裕もないのだろう。 「可愛いなぁ」 「うっ、あっ! ひゃっ」 「はは、喘ぎ声しか出てねえぞ?」 「ひゃあぁっ!?」 「お、耐えたな。偉いぞ、ダニエル。お前の弱いところしか弄ってねえのに頑張るじゃねえか」  それでも達するのは時間の問題だろう。  軽く痙攣を起こしかけているダニエルの身体を労わるかのような言葉をかけつつも、指は激しくダニエルの弱いところばかりを責め立てる。  ……もう、ダメだ。  真っ白になりつつある頭の中でも我慢の限界を悟る。  反射的に目を瞑った。 「もう少し我慢しような?」  フェリクスの優しい声が耳元で聞こえた。  それと同時に指が三本に増やされる。前立腺を刺激していた指の動きは激しくなり、中を掻き回す。時々、思い出したかのように前立腺を刺激するものの、達しそうになる前に離れていく。もどかしい感覚が耐えられないというかのようにダニエルの腰が動いてしまう。 「でも、イきたいよなぁ?」  掻き混ぜる水音が鳴り響く。  身体の中で弾けそうな熱を堪えようとしている思考が遠のいていく。 「どうしたいんだよ? ダニエル」  このままでは指が抜かれてしまうのではないだろうか。  その不安を与えるかのように指の動きが穏やかになる。ゆっくりと出口の方に向かっているかのような動きにすらも敏感に反応をしてしまう。 「フェリ、フェリ、もう、やだっ」  頭の中は真っ白だった。  ただ、与えられる快楽を拒む力が緩んでいくのと同じように刺激も弱くなっていく。このままでは達することはできないままにされてしまうかもしれない。  それは得体のしれない恐怖だった。  それならば自身の高ぶりが収まるのを待てばいいだけだという考えはダニエルの頭の中から吹き飛んでおり、自分自身を悪戯に追い込もうとするフェリクスに泣きつくように声をあげる。 「イきたい、イかせて、もう、焦らすのはやだっ」  刺激が緩やかになっているからだろう。はっきりと言葉になった。  フェリクスはその言葉を待っていたかのように前立腺を抉るように触れた。

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