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04-5.恋の病は治らない

「んぅっ」  ……なんだ。なんで、いつもと違う。  刺激に弱くなってしまっていることは自覚をしていたが、いつもよりも快楽を拾いやすくなっている。身体の変化に気付くことはできたが、ダニエルにはどうすることも出来なかった。 「んんっ、フェリ、それっ、やめっ」 「止めねえよ。ダニエル。下を向くんじゃねえ」 「うるせえっ! ひっ、んっ、見るんじゃねえっ」  言葉では嫌がりながらもフェリクスの言葉には従ってしまう。  蕩けた表情をするダニエルと目が合ったフェリクスは唾液を飲み込んだ。それから衝動に任せ、ダニエルの唇を奪う。貪り合うかのように舌を絡め、激しさを増していく。その間もフェリクスの手はダニエルの胸を弄り、快感に頭を支配されたのか、徐々に力が抜けていくダニエルは反射的にフェリクスの背中に腕を回していた。縋りつくような姿勢になっている自覚はないのだろう。  一度、離れた唇はすぐに合わさる。  会場から漏れ出している軽快な音楽は彼らの耳には届いていないのだろう。 「んんっ」  いつの間にかボタンが外されていた。  既に立ち上がっていた乳首を摘ままれる。潰されるのではないかと心配になるほどに抓られ、痛いはずの刺激すらも快感になる。塞がれた唇の間から吐息と共に声が漏れてしまう。  ……やばい、イキそうっ。  目の奥に光が点滅する。与えられる快楽はいつもよりも強く感じてしまう。  頭の中が真っ白になる。いつ見られてしまうかわからない外で行為に及ぼうとしている事実が快感を煽るのだろうか。  ……イっちまう。  無意識に腰が動いてしまう。  フェリクスもそれを感じ取っているのだろう。わざとらしく、ダニエルの腹部に股間を押し付けていた。 「んんんんっ――!!」  達してしまった。  下着が濡れるのを感じた。 「はぁ、はぁっ」  唇が離れる。貪り合っていた名残のようにどちらのものかわからない唾液が、零れ落ちた。フェリクスの腕は胸から離れ、下へと移動をする。慣れた手つきでズボンの後ろに手を入れ、尻を揉み始める。 「はは、可愛いなぁ。もう限界かよ? 淫乱」  フェリクスはダニエルの頬に口付けをした。  それから抱き着いている姿勢のダニエルに対し、笑いかける。 「腕を離せ」 「なん、でぇ?」 「俺も限界なんだよ。可愛いダニエルの淫乱が移ったみてえだわ」 「淫乱じゃねぇっ!」 「はは、蕩けた顔で何を言ってんだよ? あぁ、いい子だ、ダニエル。そのまま、座れよ」  フェリクスの指示通り、ダニエルは腕を舌に下ろした。  蕩け切った表情のままのダニエルの両肩に手を乗せ、強引に座らせる。僅かにバランスを崩したダニエルが頭をぶつけないように支えながらも、フェリクスは機嫌がいいらしく、ダニエルの髪を弄っている。 「ダニエル」  ダニエルの両肩から手を離す。  それからフェリクスは自分自身のズボンのチャックに手をかける。 「口でしてくれよ」  勃起した男性器を取り出し、それでダニエルの頬を軽く叩く。  フェリクスの男性器は先走りしており、この状況下で興奮をしていたのがダニエルにも伝わったのだろう。普段ならば嫌がってしようとしない行為を求められていると頭の中ではわかっていても、無意識に手が伸びてしまう。  ……あいわらず、大きいな。  毎夜、自分自身の腹の中を掻き回している男性器を撫ぜる。  ……これが中に入っているのか。  そう考えるだけで腹の奥が疼く。  蕩けた目をしながら、ゆっくりと口を開け、先端を舌で舐める。味わうかのように焦らしながら、少しずつ男性器を口に含んでいく。苦しくない位置で止め、舌を使って男性器を刺激していくと更に大きくなった。  ダニエルは口で行うのは苦手だった。  なにより、フェリクスの男性器を咥えると圧迫感があり、苦しくなる。 「はぁっ、んっ」  フェリクスの気持ちよさそうな声に気付き、視線を上に向ける。  反射的に右手で自分の口を押えているのだろう。  ……感じているのか?  普段から掌で踊らされていることが多いダニエルにとっては滅多にない機会だった。フェリクスの手により快楽に弱い身体にされてしまったダニエルは女役に回ることがほとんどであるとはいえ、男であることには変わらない。  恋人の感じている姿を見ると興奮してしまう。  視線をフェリクスに向けたまま、ダニエルは頭を前後に動かす。  ゆっくりとした動きを加えつつ、舌や歯で男性器を刺激するのも忘れない。 「ダニエル、ダニエルっ」  名を呼ばれると興奮をしてしまう。  フェリクスと目が合った気がしたのは互いに興奮を隠し切れなかったからだろう。フェリクスの左手はダニエルの後頭部を掴み、強引に前に押し出す。 「んぐっ!?」  それにより、男性器はダニエルの口の奥に到達し、ダニエルの表情は苦しげなものに変わった。本来なら刺激してはいけない喉元近くを刺激し、吐き気さえ催してくる。そのことに気付いてないかのようにフェリクスは腰を振り始めた。 「んんんっ!?」  苦しそうな声に気付いていないのだろうか。  それとも、ダニエルのその声はフェリクスを煽るだけなのだろうか。 「ダニエル、飲み込んでくれよ」  腰を振る速さが増していく。  逃げようとするダニエルの頭を両手で抑えつけるフェリクスは快楽に酔っているかのような表情を浮かべていた。彼にとってダニエルが苦しんでいる姿は自身の快楽を煽るだけである。  ダニエルが無意識に行う仕草は、彼の支配欲を煽るだけだった。  息ができない苦しさからだろうか。目線は上を向いたままになりつつあるダニエルの喉奥で射精をする。数秒間に及んだ射精が終わり、ダニエルの頭から手を離すと、ダニエルは咽こんだ。 「飲み込まねえとダメだろ?」  言葉とは裏腹にフェリクスは咽ているダニエルの髪を数回撫ぜ、男性器を仕舞う。ズボンのチャックを上げてから腰を下ろし、咽ているダニエルの背中を優しく撫ぜ始めた。 「下の口は咥えるのは得意なんだが、上は苦手だよなぁ」 「げほげほっ」 「落ち着け、落ち着け。吐きたきゃ吐いてもいいぞ」  軽口は叩くが、一応は心配もしているのだろう。  フェリクスの言葉に従うようにダニエルは喉に張り付いていた精子と唾液を自身の掌の中に戻していた。それを見ていたフェリクスは何を思ったのか、ダニエルの手を引っ張り、吐き戻された液体を舐めた。

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