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我儘レッスン〜1 4 頬張るの。この身体で。
電話が来た時、すごく慌ててしまったんだ。風邪だと聞いて、居ても立っても居られなかった。急がなくちゃ、急いで看病しなくっちゃって。
ほんの少し前、「手伝い」をしてもらっていた時だったら、そんなこと考えなかったと思う。何かしたくてたまらないくせに、そんなの言える訳もなくて、もどかしい気持ちを抱えながら「お大事に」なんて言って我慢をしていたと思う。
風邪が移ったらダメだから来るなと、言われたのに、僕は聞かなかったんだ。
我儘をしたんだ。
好きにしていいと言ったでしょう? なんてこじつけて、押しかけてしまった。
貴方のことを看病できて嬉しかった。
――ありがとうな。
その言葉が嬉しくてたまらなかった。
「あっ……ン」
首筋に口付けられて、小さく声を溢した。
脚を抱えられて、腿の内側に歯を立てられるのが気持ち良くて、ゾクゾクしてしまう。
「ふぅ……っン」
「あれ、嬉しかった」
「?」
何がだろうと、見上げると、環さんがちょうど服を脱いでいるところだった。逞しくて、同じ男なのにちっとも違うその裸に、視線を合わせるのは今も昔も少し緊張してしまう。
「来るなっつったのに、聞かなかったろ?」
「あ、あれはっ」
「あの我儘、最高だった」
裸の環さんに覆い被さられて、溢れるほどに光が差し込む寝室のベッドの上で、朝にはこれっぽっちも似つかわしくない熱に自然とつま先が丸まっていく。
ドキドキしてしまう。
「もっと言えよ」
「あっ……」
横向きになって、身体を丸めてる僕の耳にキスをしながら、低く、掠れた声が囁いてくる。
「雪」
その声は二週間、貴方が恋しくてたまらなかった僕には、まるで媚薬みたいなんだ。
「あっ…………、ん、って」
蕩けてしまう。
「触って……」
風邪が治ったばかりなのに、お仕事で疲れていただろうに、お腹が空いたでしょう? まだ頭痛や気だるさは残ってないですか? 今日一日はゆっくりしていてください。
そんな言葉たちを言わないといけないのに。
「僕に、触って……環さん」
口が違う言葉を言ってしまう。本心を打ち明けてしまう。我儘がすぎると身体をぎゅっと丸めて堪えようとするけれど、恋しさが膝を抱えて我慢しようとする僕の腕の隙間から溢れて言ってしまうんだ。
抱いて欲しくてドキドキしてたんだって。
二週間ぶりに貴方をもらえると楽しみにしていたんだって。
「ん……っン」
舌を絡めて、貴方のくれるキスを貪ってしまう。
「あっ環、さんっ」
膝を抱えて丸まったままの僕に覆い被さる環さんが深く、深く、舌を差し込んだ。角度を変えて深くなる口づけに夢中になっていると、そこに指が。長い環さんの指が足の付け根を撫でて、ドキドキしながら待っている孔を優しく可愛がって。
「あっ」
くぷりと入ってきた。
「雪」
「!」
骨っぽい長い指を何なく咥えてしまう。
「あっ、のっ、これはっ、えっと、あの……」
もう昨晩のことだから、やり直し。
「あのっ」
けれど、僅かに名残があったら。
「あの」
「……」
「早く、抱いて」
恥ずかしい。
「環さん」
「あぁ」
返事をしながら楽しそうに髪にキスをして。
「あぁっン」
指が昨夜準備しておいた身体を撫でてくれる。中のあったローションの僅かな名残を纏いながら。
「あっ」
早く抱いてもらいたかったから、準備をして来たの。
「やぁっ……ぁ、あ、あ、指っ」
中を濡らして、柔らかくして、貴方をもらえるのを待ち望んでいたの。会ったらすぐにもらえるように……って。けれど、忘れてしまっていた。それどころではなくなって、大事な人の看病に忙しくしていたから。だから――。
「可愛いな、ホント」
「か、可愛くなんて」
「可愛いよ」
撫でられたら、もう疼いてしまう。
ほら、指にしゃぶり付いてしまう。
中を撫でられる度にはしたない音が朝の光溢れる寝室に満ちていく。くちゅりって、甘くて、やらしい濡れた音。
「あ、はぁっ」
「クラクラするわ」
「あっ……ン」
指がずるりと抜けて、身体はもっときゅうぅって切なさに丸まった。
「あ、あっ……あぁ」
そして、欲しかった環さんを身体の奥までいっぱいに。
「やぁっ、あ、あっ」
頬張るの。この身体で。
「あっ……ン、環、さんっ……ん、ぅ……ン」
揺らされて、身体が蕩けて柔らかくなっていく。膝を抱えていた手は貴方の手に絡め取られて、丸まって閉じていた脚は貴方に揺さぶられる度に解けていく。
「やぁっ……ン」
根本まで全部もらえるとたまらなく心地良くて、気がつけばほろほろにシーツの上で身体をくねらせていた。
自分の指で準備をしても届かない場所を環さんの切先が抉じ開けて、太いところで擦りられると震えてしまう。
「はぁ……あっ……ン」
乳首を噛まれて、小さく悲鳴を上げた。
「あっ、ダメ、も、イッちゃう」
乳首も可愛がられながら中も懐柔されて、もう――。
「環さんっ」
「っ、雪」
「あ、あ、あ、あ、あ、イクっ……も、イクっ」
セットしていない無防備な貴方の黒髪が愛おしくて、昨日何度も起きる時に支えた大きな背中に腕を回してしがみついた。
「イク……環さんっ」
そして、最奥を貫かれた瞬間。
「あ、あぁああっ…………っ!」
蕩けるほどの快楽が足の先まで満ちていた。
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