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初旅行編 9 優しい意地悪

 初めてしたプライベート旅行がこんなに素敵じゃ、このあと、困ってしまうかもしれないと思った。こんな時間を過ごしてしまったら、もうこれ以上の幸せな思い出なんて作れないんじゃないかって。 「さすがに二日続けてバーベキューは退屈だったか?」 「全然です。楽しかったです」  だって、カレー作って食べたなんて、最高でしょう? 「ならよかった」  シーフードカレーを外で作ったんだ。偶然、ここに二泊すると、二日目はカレーなんだって。だから、僕は、あの日にチラリと横目で眺めるばかりだった初恋の人とここで一緒にカレーを作ることができた。  辛いものが得意な環さんには少し甘いカレー。  甘いのも好きな僕には充分に美味しいカレー。 「あの……ありがとうございます」  部屋は完全にプライベートで、誰にも邪魔されずに貴方との時間を堪能できる。 「何が?」 「こんな、露天風呂付きの離れなんて、僕には贅沢すぎて」 「違う」 「?」 「プールジャグジー、露天風呂付き、メゾネットヴィラ、バーベキュー用専用テラス付き」  思わず笑ってしまった。そうそうそんな長い名前の部屋でしたって笑うと、すごく自慢気な顔をしてる。 「上条家の次男坊が贅沢すぎるなんて謙遜するなよ」 「僕は」 「それに露天風呂付きにしたのは俺のため」 「?」 「肌、誰にも見せないでいいからな」 「っ、あっ」  引き寄せられて、首筋にチリッと小さな痛みと小さな刺激。それから、敏感に反応してしまう僕のせいで柔らかいお湯がピシャンと踊るように水音を立てた。 「だから露天風呂付きは必須。それから、お前が楽しそうに笑う顔を堪能するのも、俺がしたいからなだけ」 「あっ……や、ぁっン」 「それに部屋に露天風呂があればあれこれいかがわしい悪戯もし放題」 「あっ」  ゾクゾクする。 「一応、名前の通った弁護士な者で」  環さんの唇が乳首に微かに触れるの、もどかしくて、焦ったくて、もっとちゃんと可愛がって欲しくて、たまらなくゾクゾクする。 「公衆の面前で盛れないだろ?」  これだけでイッてしまいそうなくらい。  掠める唇に、引き寄せてくれる指先に、それと、こんなに精悍な人が僕に興奮して、盛ってくれることに。 「あっ」  今すぐ、欲しくなるくらいに。 「環、さん……これ」  欲しいって、おねだりをするため、お湯の中でいきり勃つ固い熱に触れた。指先で撫でて、それから掌でぎゅっと握りながら、お湯の中で扱いて。  数回そうしただけでもっと硬くなったそれに、喉が鳴る。 「やばいな……今日の雪、すげぇ可愛い」 「! 環さんっ、やっ、ぁっ」  押し倒されたのは露天風呂の縁。ウッドデッキの上に押し倒されて毛足の長いマットの上に横たえられると、パタタ、と湯の雫がマットを濡らした。  でもそれに構ってられないくらい、口に咥えられて、全身に快感が駆け抜ける。ジャグジーにもなっている露天の泡音よりもずっと夜空に甲高く自分の甘い悲鳴が響いてしまう。 「やぁン」  環さんの口の中で舌にも頬の柔らかい内側にも可愛がられて、たまらなくて、爪先立ちになりながら脚をあられもなく広げてしまう。 「あっ……」  気持ち、ぃ……の。 「やぁ……」  腰を浮かせて、身体をくねらせてしまうくらい。 「あ、あっ……」  恥ずかしいほど、甘ったるい声をあげてしまう勝手な自分の口を手の甲で押さえながら、もう、お願いって、手を伸ばした。僕のを咥えて忙しなく上下する環さんの髪を撫でて。 「あ、あ、あっ」 「雪」 「やぁっン」  足の付け根をちゅっと吸われて、身体が魚みたいにマットの上で跳ねてしまう。 「あ、あ、あ」  そんなところにキスマーク付けたら、ダメなのに。 「あ、環さんっ」  身体を洗う度に目に入る場所に貴方の唇の痕があると触りたくなる。触ったら、貴方にも触って欲しくなっちゃうのに。 「お願い」  自分からもっと脚を開いて、もっと大胆に貴方を誘わないと、きっとくれない。優しい愛撫をくれるけれど、それは意地悪な前戯で。すごくすごく欲しいものは、トロトロに甘く甘くおねだりをしないともらえない。 「ここに、欲しい、です」  自分の指をわずかに入れて、そっと、遊んでみせた。 「ここ、に……」  ちゅって、自分の指にキスをして濡らして、その指をクプリと挿れて。 「あっ……」  浅いところを自分の指で可愛がって、よがり声をあげる。 「あ、環さんっ」  切ないって名前を呼んで訴えて。僕の指じゃ届かないところを抉られたいと指でわずかに広げながら、ツンと尖っている乳首を自分の掌で揉んだ。 「雪」 「あ、お願い」 「何?」  まだ意地悪。 「何か、欲しい?」 「ぅ、ん」  コクンと頷くと、覆い被さってじっと上から視線で愛撫してくれる。 「これ……欲し」 「これ? って」  本当に意地悪。 「環さんの、硬くて、大きいので」  でも、この甘い意地悪がたまらなく好き。  こんなふうに貴方に優しく意地悪してもらえるのなら、いくらでもはしたなくなれてしまうくらい。 「僕のこと」  そして、重なる身体が貴方から零れ落ちる湯の滴で濡れていくと、もうもらえると期待に胸が高鳴っていく。 「奥まで全部、可愛がってください……あぁっ……あ、ン」  そして、やらしくて淫らなことをこんな場所でする有能な弁護士さんのいけない唇に触れて、舌にしゃぶりつきながら、深くまでゆっくり抉じ開けてもらえた身体が気持ちよさそうに震えた。

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