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第3話
絢瀬の恋人という立場になった千隼は、さっそく次の土曜日の夜にパートナーの証であるカラーを絢瀬と一緒に買いに出かけた。
首輪も考えたけれど、やはり仕事をしている人に首輪を着けさせるのは如何なものかと思い、首輪よりも気持ちの重たい指輪を買った。
絢瀬はそれにさぞかし喜んで、少しも手放さなくなった。
次の日が日曜日で休みだったので、千隼は絢瀬の家に遅くまで居ることになった。これは絢瀬が帰ってほしくないと願ったからだ。
「溝口君」
「千隼でいいですよ。」
「ぁ……じゃあ、えっと、俺の事は絢瀬って呼んでくれる?」
「はい。それで、どうしました?」
二十二時。
食事も済ませ、千隼はいつ帰ろうと思い始めた頃。
絢瀬はそろりと千隼に近づき、床に正座をした。
そして申し訳なさそうな顔で千隼を見上げる。
「俺と、プレイ、してくれませんか。」
「ああ、そんなことか。勿論いいですよ。でも先にセーフワード決めないと。夢中になって止まれなくなる可能性が零じゃないので。」
「あ、そっか。」
domはsubが本気で嫌がっているのかどうかを見極める事が最重要で、それがわからず暴走してしまわないように、セーフワードを決めておかなければならない。
「えっと、何にしよう?」
「何でもいいですよ。ストップでも、ギブアップでも。」
「じゃあ、ギブアップにしよう。本当にダメじゃないと言わなそうだし」
「うん。じゃあ『ギブアップ』で。」
すんなりと話が進み、絢瀬は笑みを零す。
これからはこうして自分の欲を満たせるんだと思うと嬉しかった。
絢瀬は彼を見上げながら、さっそく何か『命令』が欲しいと表情だけで訴える。
「このプレイって、どこまで許してくれますか。性的な事は有り?無し?」
「え……」
「俺、男でも抱けますよ。」
「っ!」
けれどそんなことを言われては一度考える必要があって、絢瀬は咄嗟に彼から視線を外し、膝の上に作った拳を見た。
「……女性との経験はあるけど、男性とは……それに千隼君が『抱ける』って言うなら必然的に俺は『抱かれる』側になるわけで……」
「そうですね。」
「……挑戦は、してみたい。だって今後一生千隼君と一緒に居たいんだ。自分を満たしてくれる人が君しかいない」
「うん」
絢瀬は覚悟したけれど、何せ年齢が年齢なので年下の……それも部下に『抱いてくれ』とは言い難かった。
その気持ちを察した千隼は、静かに口角を上げる。
「say 」
「っあ、ぁ……」
「rush 」
「っ、抱いて、ください……」
真っ赤になりながらそう言った絢瀬に千隼はただ一言「goodboy 」と言った。
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