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第一章・8
「だって、寂しいんだもん。僕だって、辛いよ」
どんなに肌を合わせても、健斗は僕を好きになってはくれないんだ。
そう思うと、誰かに慰めてもらわずにはいられない。
司は大人の包容力で、そんな実由を抱いてくれる人だった。
「いやいやいや、何考えてる? 司さんとは、そういうんじゃないから!」
お小遣いをくれるから、会ってるだけ。
そう自分を偽ることにも、もう慣れてしまった。
「何、着て行こうかな。このカットソー、いいかな」
司と会う時には、少し背伸びをして大人っぽい服を選ぶ。
そしてクローゼットの中には、そんな大人びた服ばかりがどんどん増えていく。
「僕、何してるんだろ」
こんなことする暇があるのなら、健斗に会えばいいのに。
会って、好きだよ、って言えばいいのに。
「……言えないよ。いまさら」
デートに着ていく服を決め、実由はベッドのシーツを取り換えた。
昨夜、健斗に貸したパジャマも洗った。
健斗の匂いを、消してしまった。
心からは絶対に消せない健斗の残り香を、無理にもみ消した。
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