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第二章 いや、何でもない。
午後、待ち合わせの場所に着くと、司はすでに待っていた。
「ごめん。遅くなった!」
「いや、私が早すぎただけだから」
相変わらず、目立ってるね。
実由は、司に冗談交じりでそう言った。
そんな風に見られることも、言われることも、司は苦手なのだ。
だが、目立たずにはいられないその姿。
長身で、細マッチョ。
黒髪は緩やかなウェーブがかかっており、清潔感のあるナチュラルツーブロック。
面立ちは整っており、瞳が優しい。
(非常にモテるタイプなんだけど、何で僕?)
こうして司の隣にいるだけでも、羨ましがられるはずだ。
「行こうか」
「あ、うん」
二人は、並んで歩きだした。
「何か食べる?」
「ううん。お昼、食べて来たから」
「じゃあ、ホテル行く?」
「展開、早ッ!」
笑いながら、実由は司の車に乗った。
国産でも、高級ランクの自動車だ。
滑るように走り、司と実由をホテルに運んだ。
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