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第三章・6
薄情にも、さっさと先に帰ってしまった秀孝を思い、淳は涙をこぼしていた。
汚れてしまった床を、ティッシュで拭きとりながら。
「僕は、こんなに好きなのに。秀孝、好き……」
どうすれば。
どうすれば、彼は振り向いてくれるんだろう。
僕だけを、見てくれるんだろう。
そんな時、健斗のことが思い出された。
『あの、鈴谷さん。放課後、どこかに寄りませんか?』
熱を帯びた、まなざし。
彼は、僕のことが好きなんだ。
解りやすい、健斗の好意だった。
「飛永くんは確か、寮生だったよね」
淳は、ふらりと立ち上がった。
そして、少しだけ前を向いた心地で、生徒会室を後にした。
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