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第四章・3

「じゃあ、決まり。飛永くんのこと、健斗って呼んでもいい?」  僕のことも、淳って呼んで。  そう言う淳に、健斗は慌てた。 「い、いきなり淳だなんて。慣れるまで、淳さんって呼びますよ」 「好きにして、いいよ」  にっこり微笑む淳の姿が、健斗の目には天使に見える。 (実由、やったぜ!)  心の中でガッツポーズを決め、健斗も淳に笑顔を返していた。 「ああ、夢みたいだ。こうして淳さんと付き合えるなんて」  アイスコーヒーで喉を潤し、健斗は浮き浮きと実由を思った。 (今日は、実由に報告だな。淳さんと付き合うようになったって!)  あいつのおかげで、俺、童貞じゃないし。 (いやいやいや、いきなり何考えてるんだ、俺!)  一人でどぎまぎしている健斗の手を、淳の白い指がなぞってきた。 「よかったらこの後、僕のマンションに来ない?」 「え!?」 「親元を離れて、一人暮らしなんだ。泊っても、いいよ?」 (一人でマンションとか、すげえ! っていうか、焦点はそこじゃなくって!) 『泊っても、いいよ』  つまり、これは……。  淳さん、俺のこと誘ってるんだ!  健斗の目は、見開かれていた。

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