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第四章・4

 動揺する健斗に微笑みかける淳は、どこまでも年上の落ち着きを失くさない。 「付き合い始めてすぐ、っていうのは……、ふしだらかな?」 「え、いや。全然」  ホントに、いいの?  健斗は、念を押した。 「いいよ。夕食、お弁当でも買って帰って。それから……」  それから、淳さんと俺は! (ああ、鼻血出そう) 「健斗は、寮だよね。遅くなっても、平気?」 「あ、うん。規則、あっても無いようなもんだし」 「生徒会副会長が、悪いこと言ってる」  そこでようやく、健斗の神経は和らいだ。  声を立てて笑い、残りのコーヒーを飲んでしまった。 「じゃあ、行こうか?」 「うん。僕のマンション、電車で3つ先だから」 「結構、近いね」 「便利だよ」  すっかり慣れた口調で話す健斗の横で、淳は周囲をちらりと見た。  同じ制服の生徒たちが、二人を見ながらひそひそと小声で話している。 (その調子で、僕と飛永くんとのこと、拡散してね)  そして、廻り回って秀孝の耳に入れてあげて。  そうしたら、彼はどんな反応を示すかな。  期待半分、不安半分で、淳は賭けに出ていたのだ。

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