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第六章・2
「秀孝さんへの当てつけで、他の人と付き合って見せてる、とか!」
これじゃないかな、多分。
「でも、何で健斗かなぁ~?」
他にいくらでも、淳さんに思いを寄せている人はいる。
「健斗よりイケメンで、健斗より頭が良くて、健斗より……」
やめた、と淳は息を吐いた。
たまたま、そこに居た。
それが、健斗なのだろう。
「僕が淳さんと張り合っても、勝てっこないし」
それより、目の前のことを片付けなくては。
文化祭のテーマとその趣旨を書いた原稿を、放課後までに清書して印刷しなくてはならないのだ。
教室の机にノートパソコンを開き、実由は作業に取り掛かった。
しかし、集中できない。
なにせ、周囲から健斗と淳の噂が聞こえてくるのだ。
心穏やかではなかった。
『鈴谷さん、飛永と寝たのかなぁ』
『マンションに行った、って噂がホントなら、そうだろ』
『あぁ! 俺、憧れてたのに!』
(全く。皆うるさい!)
不機嫌な顔をして、実由はキーボードをばしばし叩いた。
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