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第六章・3
放課後、実由は生徒会室へやって来た。
そこにいたのは、健斗……ではなく、秀孝だ。
そして。
(嘘! 淳さん!?)
てっきり健斗と一緒に帰ったものだと思っていた淳が、秀孝と何やら話し込んでいるのだ。
とっさに身を隠し、実由は聞き耳を立てた。
「急に飛永と付き合う、なんて。どういう風の吹き回しだ?」
「別にいいじゃない。勝手でしょう」
そこで秀孝は、ゆっくりと腕を組んだ。
「淳は、私のことが好きだと思ってたけど?」
「好きだよ」
「じゃあ、なぜ」
好きだけど、と淳は言いよどんだ。
「僕は秀孝のことが好きだけど、秀孝は僕のこと好きじゃないよね」
「何、すねてるんだよ」
「僕は秀孝にとって、その他大勢の一人。そんなの、もう嫌になったんだ」
実由は、息をつめて秀孝の返事を待った。
(やっぱり淳さんは、秀孝さんのことが。で? 秀孝さんは?)
返事は、冷たいものだった。
「じゃあ、好きにしろよ。飛永とでも誰とでも、付き合うがいいさ」
「秀孝!」
「私も、好きにさせてもらうから」
あまりの言葉に、淳はばたばたと生徒会室を出て行ってしまった。
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