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第六章・4

「さて。そこにいる、毛利くん」  実由は、ぎょっとした。 (バレてた!)  そっと壁の陰から出て来た実由に、秀孝は微笑みかけた。 「聞いてたろ? 全部」 「は、はい……」 「そういうわけで、淳は私の元から去ってしまったよ」 「そう、でしょうか」  首を傾げる秀孝に、実由は訴えた。 「今からでも、追いかけてあげてください! 淳さん、可哀想です!」 「可哀想なのは、私の方だよ。飼い犬に手を噛まれた気分だ」 「い、犬!?」  とにかく、と秀孝は憂い顔だ。 「傷ついた。深く」 「だったら、淳さんだけを見てあげればいいのに」  君も聞いてただろう、と秀孝は顔を上げた。 「淳は、ああいう性格なんだよ。自分のためなら、飛永くんを利用するような」 「そ、それは」  まあ、掛けて。  秀孝は椅子を実由に勧めて来た。

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