49 / 100

第七章 健斗の気持ち

「あ……、寝ちゃってたんだ」  目を覚ました実由は、瞼を軽くこすった。 「シャワー、浴びなきゃ」  バスルームで裸身になると、嫌でも放課後の情事が思い出された。 「僕、秀孝さんに抱かれちゃったんだ」  そして。 「恋人に、なったんだよね」  自分で自分の体を、きゅっと抱いた。  胸が疼く。  秀孝の甘い毒は、実由の体を、心をすっかり蝕んでいた。 「嬉しいな」  言葉に出して、言ってみた。  嬉しい?  ホントに? 「ホントに嬉しいに決まってるよ。相手は、あの秀孝さんなんだよ?」  学校一の人気者の、恋人になった。  浮かれた足取りでバスから上がり、エアコンの温度設定を下げようとリモコンに手を伸ばした。  そこには、パンダの模様がついた、可愛いポチ袋が置いてあった。 「あ……、司さん」  昨夜、彼に抱かれた。  起きた時にはもう彼の姿はなかったが、テーブルの上にそっと置いて行ってくれたのだ。

ともだちにシェアしよう!