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第九章 水族館にて
いっそもう、日曜日に台風が来て、水族館がお休みになればいいのに!
そんなことを考えていた実由だったが、恨めしいことにその日はきれいに晴れた。
「うう。気が重いよう」
獣のように実由を抱いた秀孝だったが、その後は穏やかだった。
学校でも、放課後も、紳士的に振舞った。
だが、実由には忘れようもない恐怖だ。
「あの時の秀孝さん、怖かったな」
そして、初めて彼に嫌悪感を抱いたのだ。
ほんのかすかで、日常で消えてしまいそうなものだったが、それはやけにしつこく尾を引いた。
あれが、彼の本性なのかもしれない。
そんな思いさえ、胸をよぎった。
それでも、秀孝と別れられない自分がここにいる。
健斗を失った孤独感を、彼で埋める日々が続いていた。
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