66 / 100
第九章・2
待ち合わせ場所の秀孝を見て、実由は息をのんだ。
「淳、さん!?」
秀孝の隣には、顔色の悪い淳が立っていたのだ!
「ど、どうして? 秀孝さん?」
「せっかくだから、ダブルデートしようかと思って」
淳を置いて、さっそく実由の手を握ってくる秀孝だ。
(ホントに。一体、何考えてるの? 秀孝さん!)
困惑する実由は、痛いほどの視線を感じていた。
淳が、見ている。
こちらを、秀孝と実由を、見ている。
(な、何か悪いよね)
しかし、実由の気持ちも途端に揺らいだ。
健斗が、こちらに向かって走って来たのだ。
「遅くなって……、え? 実由!?」
「健斗……」
ちら、と実由は秀孝を見た。
彼は、涼しい顔をしている。
「じゃあ、行こうか」
こんな具合に、その場を仕切り始めている。
二人と二人は、いや、四人は、それぞれの思いを胸に水族館へ入って行った。
ともだちにシェアしよう!