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第九章・2

 待ち合わせ場所の秀孝を見て、実由は息をのんだ。 「淳、さん!?」  秀孝の隣には、顔色の悪い淳が立っていたのだ! 「ど、どうして? 秀孝さん?」 「せっかくだから、ダブルデートしようかと思って」  淳を置いて、さっそく実由の手を握ってくる秀孝だ。 (ホントに。一体、何考えてるの? 秀孝さん!)  困惑する実由は、痛いほどの視線を感じていた。  淳が、見ている。  こちらを、秀孝と実由を、見ている。 (な、何か悪いよね)  しかし、実由の気持ちも途端に揺らいだ。  健斗が、こちらに向かって走って来たのだ。 「遅くなって……、え? 実由!?」 「健斗……」  ちら、と実由は秀孝を見た。  彼は、涼しい顔をしている。 「じゃあ、行こうか」  こんな具合に、その場を仕切り始めている。  二人と二人は、いや、四人は、それぞれの思いを胸に水族館へ入って行った。

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