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第九章・3
「まさか、実由たちとダブルデートだったなんて」
明るく振舞う健斗だったが、動揺していた。
(淳さん、新納さんと一緒になって、大丈夫かな)
健斗は、淳の思いが再び秀孝になびくことを恐れていた。
「賑やかで、いいんじゃない?」
併せる実由は、健斗を見ることが辛かった。
(健斗、淳さんと手なんかつないでる)
痛む胸に、実由は秀孝の狙いに気が付いた。
秀孝さんは、僕に罰を与えてるつもりなんだ。
先だって、司の後に実由の体を抱いた秀孝。
その時に、実由が自分以外の男に身を任せたことに気づいたに違いない。
(だから、僕に幸せそうな健斗を見せつけて。意地悪してるんだ)
もうヤだ。
泣きそう。
でも……。
(淳さん、すごく辛そう)
秀孝さんへの当てつけのために健斗と付き合う淳さんは、少し嫌いになった。
だけど、今なら彼の気持ちが解る。
(やっぱりまだ、秀孝さんのことが好きなんだね)
僕と同じだ。
健斗が好きなのに、秀孝さんと付き合ってる僕と、同じだ。
そんな風に、考えた。
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