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第九章・4
大きな水槽を巡り、イルカショーに歓声を上げ、可愛いペンギンの赤ちゃんを見た後、四人は館内のレストランへ入った。
食事を終え、お茶を飲みながら話すのは、もっぱら健斗の役目だった。
「可愛かったなぁ、ペンギンの赤ちゃん! 連れて帰りたくなっちゃったよ!」
「ぬいぐるみじゃない、っての!」
そして合の手を入れるのは、実由なのだ。
淳は柔らかく微笑みながら、その会話を聞いている。
聞きながら、心の中で泣いていた。
(秀孝に振り回されて疲れちゃって、思わず健斗に飛びついたけど)
それでもやっぱり、本当にお似合いなのは実由なのだ、と。
そして、我に返ることを言ってくるのは、秀孝だ。
「実由。ペンギンのぬいぐるみ、買ってあげるよ」
「え!? でも、高いよ!?」
「いいんだ。今日は財布に5万円入れて来た。全部、実由のために使いたいんだ」
それだけの価値がある人だからね、実由は。
何ともきざな言い回しだが、実由はぎょっとした。
(5万円って、あの時司さんにもらったポチ袋に入ってた額と同じ)
ひゅっ、と元気が引いてしまった実由を見て、秀孝は腹の中でにやりと笑った。
(意味が解ったみたいだな、実由)
素知らぬ顔でお茶を飲む、秀孝だ。
実由は、震えた。
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