69 / 100

第九章・5

「5万円とか、すげえ! 淳さん、ごめん。俺、そんなに持ってきてないよ」 「気にしないで。健斗は、健斗だから」  健斗の明るい声が、今の実由と淳には救いだ。  そんな和やかな空気を割って、秀孝が立ち上がった。 「そろそろ、行こうか」 「え、もう?」 「他のお客さんが、並んで待ってる。席を譲らないとね」  そこで四人は、レストランを後にした。  気になったのは、淳の顔色だ。  顔色が白いを通り越して、青くなっている。  実由は、思いきって声をかけた。 「淳さん、大丈夫ですか?」 「ん、平気。でも、ごめん」  先に行ってて。  そう言い残し、淳はレストルームの方角へよろよろと歩いていく。 「健斗は……、あれっ?」  健斗が、いない。 「あいつ、こんな時に迷子!?」  淳さんを、介抱しないといけないのに! 「全く気が利かない……、って、あれ? 秀孝さんは?」  いない。  気付くと、実由は独りぼっちになっていた。

ともだちにシェアしよう!