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第九章・5
「5万円とか、すげえ! 淳さん、ごめん。俺、そんなに持ってきてないよ」
「気にしないで。健斗は、健斗だから」
健斗の明るい声が、今の実由と淳には救いだ。
そんな和やかな空気を割って、秀孝が立ち上がった。
「そろそろ、行こうか」
「え、もう?」
「他のお客さんが、並んで待ってる。席を譲らないとね」
そこで四人は、レストランを後にした。
気になったのは、淳の顔色だ。
顔色が白いを通り越して、青くなっている。
実由は、思いきって声をかけた。
「淳さん、大丈夫ですか?」
「ん、平気。でも、ごめん」
先に行ってて。
そう言い残し、淳はレストルームの方角へよろよろと歩いていく。
「健斗は……、あれっ?」
健斗が、いない。
「あいつ、こんな時に迷子!?」
淳さんを、介抱しないといけないのに!
「全く気が利かない……、って、あれ? 秀孝さんは?」
いない。
気付くと、実由は独りぼっちになっていた。
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