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第十章 四人の気持ち

「みんな、どこに行ったんだろう」  健斗は、水族館の中で一人きょろきょろ辺りを見回していた。  館内放送で呼び出してもらおうかな。  そんな風に考えた時、携帯が鳴った。 「淳さんからだ!」  健斗は、急いでスマホを耳に当てた。 「もしもし、淳さん? 今、どこにいるの?」 「……」 「淳さん?」 「ごめんね。少し気分が悪くなって、休んでたんだ」  それは大変だ、と健斗は慌てた。 「じゃあ、もう帰る? 送っていくよ!」 「ううん。大丈夫」 「でも、危ないよ」 「……ごめんね」  何、どうしたの、と問いかける健斗に、淳は静かに言った。 「秀孝が、送ってくれるから」  ホントにごめん、と言い残し、通話は切れた。  健斗は、しばらく動けなかった。 「嘘、だろ」  人ごみの中、彼の場所だけ時間が止まっているかのようだった。

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