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第十章・2
「あ! やっと見つけた!」
実由が健斗を見つけたのは、水族館ショップの前だった。
どこかぼんやりとした彼の姿に、実由は頬を膨らませた。
「もう、健斗! ぼーっとしてるから、迷子になるんだよ!」
「あ、実由……」
反応が、鈍い。
おかしいな、とは思ったが、実由は彼の腕を取った。
「ね、淳さんと秀孝さん探そう。放送で、呼び出してもらおうか?」
「いや……。淳さん、帰ったから」
「そうなの!?」
具合悪そうだったもんね、と言った後、実由は健斗の顔を覗き込んだ。
「送っていかなくても、いいの?」
「うん……」
「何か健斗、変だよ?」
「淳さん、新納さんに送ってもらう、って。電話があったから」
実由は、息をのんだ。
「秀孝さんが」
秀孝さん、何で?
僕はまだ、ここに居るのに!
「どうやら俺、フラれちゃったみたいだな」
「それを言うなら、僕もだよ」
二人で呆然として、顔を見合わせた。
最後に見た淳のように、青い顔をしていた。
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