77 / 100

第十章・6

「はい、ハーブティー」 「サンキュ」  健斗は、実由のアパートに来ていた。 「ねえ」 「何だよ」 「淳さんに、連絡したら? 具合は大丈夫か、って」  それには、首を横に振る健斗だ。 「今頃、秀孝さんと一緒に……」 「そんなの、解んないよ!」  実由は、身を乗り出した。 「マンションの外で、さよならしたかもしれないじゃん!」 「だったら、実由の方こそ新納さんに電話しろよ。何で先に帰っちゃったのか、って」 「そ、それは……」  黙ってしまう。  口を、つぐんでしまう。  秀孝と淳が愛し合っていることが容易に想像できるのは、健斗だけではなかった。 「秀孝さん、やっぱり淳さんのことが」 「淳さん、やっぱり新納さんのことが」  二人で、大きな息を吐いた。

ともだちにシェアしよう!