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第十章・8
実由は、健斗の思いやりあふれる言葉に感動していた。
(きっと、淳さんと付き合ったからだね)
でも……。
『いや、今日はいいよ。実由も、傷ついてるだろ?』
(でも、『今日は』って、どういうこと?)
明日はしたい、ということだろうか!?
「まぁ、いいや」
「何だよ」
何でもない、と笑顔の実由に、健斗は手を差し伸べた。
「明日はしたいな。彼氏ごっこ」
「やっぱり!」
今日は、握手したい。
そう言って、健斗は実由の手を握った。
(健斗の手、こんなに逞しかったっけ?)
大きくて皮の厚い、固い手触り。
「何かあったらさ、連絡しろよ。電話でも、ラインでも」
「うん、ありがとう」
「お茶、うまかった」
「また、飲みにおいでよ」
健斗を見送った後、実由は深く息を吸い、吐いた。
涙が一粒、ぽろりと落ちた。
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