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第十一章 好きだよ

 夜、実由のスマホが鳴った。 「秀孝さん」  しばらく置いて、覚悟を決めて、実由は電話に出た。 「こんばんは、秀孝さん」 『今日は、すまなかった』 「淳さん、大丈夫だった?」 『ああ。もう落ち着いて寝ている』  なぜだろう。  喉がつまる。  涙が、こみ上げてくる。 「やっぱり、淳さんのマンションにいるんだね」 『うん。どうしても、放っておけなくてね』  少し鼻声の実由に、秀孝は胸を痛めた。  秀孝は、実由と付き合うようになってから、人への気遣いを覚えた。  優しくする気持ちを、身につけていた。 『実由、大丈夫か』 「大丈夫じゃないよ」 『すまない。だが、今回の騒動は、全て私のせいで始まったことなんだ。淳は、許してやって欲しい』 「解ってるよ、そんなこと」  涙をぽろぽろこぼしながら、実由はスマホを握りしめていた。

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