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第十一章・3

 今、声を聞かれたら。 (絶対、泣いてるってバレるよね) 『今からシャワー浴びるから、ダメ』 『じゃあ、終わってから』 (と、とにかく、ダメ!)  実由は返事をよこさずに、バスルームへ逃げ込んだ。  湯を浴びながら、涙を流し、嗚咽を流した。  ようやく芽生え始めていた秀孝への愛を、流した。 「泣いたら、ちょっとさっぱりした」  そんな心地でパジャマを着ていると、携帯が鳴った。 「健斗かな」  しかし、それは司からのものだった。  そろり、と出てみると。 『もしもし、実由?』 「司さん」 『入れてくれる? 今、アパートの前にいるんだけど』  展開、早ッ!  司の行動力に舌を巻きながら、実由はドアへ向かった。  開けると、本当に司が立っていた。

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