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第十一章・7
「言えないよ、いまさら」
「勇気を出して」
「でも、嫌だ、って言われたら……」
臆病な実由に、司は微笑みかけた。
「じゃあ、こうしよう。もし、健斗くんが実由と付き合わないって言ったら」
「言ったら?」
「私と、付き合って欲しい」
「……付き合ってるじゃん、今」
そうじゃなくって、と司は実由の頬に手を当てた。
「お金を介さない、本当の恋人になって欲しいんだ」
「司さん」
「好きだよ、実由」
そして、司は実由にキスをした。
静かで、柔らかで、優しいキスだった。
「少しだけでいいんだ。自分を、前に押すんだよ」
「できるかな、僕に」
「できるさ」
そして、司は起き上がった。
「結果が出たら、知らせて」
彼が衣服を整えるのを、実由はじっと見ていた。
バッグから、ポチ袋を出す司。
それを、差し出してくる司。
実由は受け取りながら、涙をこぼした。
(僕、司さんの気持ち、全然考えてなかった)
黙って寝室から出ていく司の背中を、ぼやけた視界で見送った。
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