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第十二章・10
「最後に、一つだけ。キス、してもいいかな?」
「う、うん」
瞼を閉じた実由の頬に、そっと司の唇が触れた。
羽根のように静かな、キスだった。
「ありがとう、実由。さようなら」
「さよなら、司さん」
「健斗くんと、いつまでも仲良くね」
「うん……、うん」
司が部屋を出て行った後も、実由は涙を流していた。
泣いているところに、ラインの通知音が鳴った。
「健斗だ」
涙をぬぐって、実由は画面を見た。
『実由、明日から一緒に登校しようぜ。アパートまで、迎えに行くよ』
『迎えに、って。健斗、寮だから返って遠くならない?』
『できるだけ、一緒にいたいんだ』
『ありがとう。嬉しい』
『生徒会活動も、頑張ろうぜ。文化祭、絶対に成功させような!』
『うん!』
『じゃあ、おやすみ』
『おやすみ、健斗』
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