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第十二章・11

 ラインを終えて、実由は窓を開け外を見た。  街灯の下には、秀孝もいなければ、司もいない。  ただ、そのうち健斗が立つこともあるのだろう。  見上げると、夏の星座が輝いている。 「星、こんなにきれいに見えたんだっけ」  ようやく上を向くことが、できるようになった。  そんな心地だ。  学校に行けば、嫌でも秀孝や淳と顔を合わせる。 「しばらくは、気まずいかもしれないけど。辛いかもしれないけど」  でも、大丈夫。  健斗が、いてくれるから。 「だから、司さんも頑張ってね」  いい人を見つけて、幸せになって。  ようやく、人の幸せを願える心の余裕が、できた。 「さ、勉強しようかな!」  うんと勉強して、健斗と同じ大学に行くんだ!  未来を見つめる、ゆとりができた。  窓を閉め、デスクに向かう。  そこには、以前司が置いて行ってくれたポチ袋があった。  実由はそれを、そっと引き出しにしまった。  過去を胸の内にしまい、前を向いた。 「健斗、大好きだよ」  そして、テキストを開いた。  未来への、1ページだった。

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