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第3話

 で……結局、本末転倒な気がするけど、俺の借りているアパートに連れて行った。  彼方は実家で母と暮らしているらしいが、俺は大学から上京して、バイトしながら一人暮らし。  掃除もろくに行き届いてなくて申し訳なかったけど、最低限の食料品などだけ買って、彼方をワンルームの客人を招くには少々狭い部屋に上がらせた。  彼方はベッドにちょこんと腰掛けていて、俺も隣に座ることにする。 「……さっきは悪かった。カッとなっちまって……。あのさ、俺……そういう知識とかないから、良かったら教えてくれないか」  彼方も冷静になってきたのか、素直に頷いた。 「子宮とか卵巣とか、女性としての機能はないみたいなんです。医師の見解では、僕がお母さんのお腹にいる時に、本来は双子で、その、お姉ちゃんだか妹だかと一体化しちゃった名残りだろう……って」 「ふぅん……」 「驚かないんですかっ?」 「いや、そういう訳じゃないけど。双子がどうの……? とかいうのはわりとよく聞くし。それより彼方から告白された時の方が、ドキドキしたから……」 「あ……。あの、その件、なんですけど……晴彦さんも、僕のこと……って、本当ですか?」 「……お、おう。好きだよ。彼方がどんな身体であれ、すげぇ可愛いし傍にいてやりたいって思ってる」  我ながら恥ずかしい台詞を吐いているな、と思いつつも、相手が彼方だから止まらない。 「そう、ですか……じゃあ、隠し事は、いけませんね」  彼方がぽつぽつ語り出した過去は、真実を知って良かったような、聞きたくなかったような、酷いものだった。  人と違った身体で生まれた彼方は、親もどう接していいかわからなかった。生まれてすぐ離婚してシングルマザー家庭になり、教師にも好奇の目で見られ、男とも女とも扱いが曖昧で、友達もできなかった。  しかも最悪なことに、中高なんかは一貫校に入ってしまって、クラスのヤンキーどもから身体のことを知られ、レイプ……それも毎日のように輪姦された。  彼方の性に対する変な常識は彼らから教わった、というより洗脳されたものらしい。話だけでもはらわたが煮えくり返りそうだ。 「当時は知識も何もなくて……妊娠したらどうしようって毎日怯える日々で……でも、僕、晴彦さんを一目見て、あなたが相手なら、その……妊娠してもいいって思えたんです」 「いや、検査は受けたんだろ? それならいくらなんでも妊娠は……」 「き、気持ちの問題ですっ!」  気弱な彼方がなんだかムキになって言うもので、「そっか」としか反応できなかった。  けどこれだけは、俺も本気で言える。 「大丈夫。俺、彼方のこと誰より大切にするから。彼方が嫌なことは絶対にしない。幸せにするって約束するから」 「でも……僕やっぱり、晴彦さんには全部知っていてほしいです」  彼方はベッドに腰掛けたまま、下半身を露出し始めた。 「え、え!? ちょ、彼方」 「お願いです。気持ち悪かったら逃げてもいいです。だから見て……」

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