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第4話 ※

 彼方はベッドに腰掛けたまま、下半身を露出し始めた。 「え、え!? ちょ、彼方」 「お願いです。気持ち悪かったら逃げてもいいです。だから見て……」  健気な上目遣いで言われたら、そうするしかなく。俺も彼方と対面して、股間に顔を近づけた。  やっぱり、本当に陰茎と睾丸はついている。肛門もあって、胸が大きいとかそういうこともなくて、それだけ見れば男そのものだ。  ただ、蟻の門渡りに匹敵する場所に、それはあった。  ごくり。どうしても生唾を呑み込んでしまう。そりゃあノンケである以上、恋人がいたこともあるし、AVなんかで見たことはある。でも彼方のものは明らかに未知だ。 「っ……本当に……あるんだ、な」 「ううっ……はい」  彼方は猛烈に恥ずかしそうに、でも隠そうとはしない。全部俺に見てもらって、それでも変わらない気持ちでいてほしい。認めてほしい。そんな強い意志があるように思う。 「クリトリスは……ないの?」 「あ、はい……たぶん、おちんちんがそれの代わりなんだと思います」 「そうなのか……」  律儀に答えてくれちゃって、ちょっと生真面目すぎるぞ。これが俺じゃなかったらどうするつもりなんだ。 「……ん、あれ、これ……え? 愛液?」 「……ッ!!」  割れ目に沿って透明な粘液が溢れていたものだから、思わず指先ですくい取ってしまった。  我慢汁と似ているけど、なんかこう、もう少し粘り気があって、匂いもそれほどなくて。  まるでこの穴になにか……そう、棒状の……例えばペニスとか……そういうものを突っ込んでも傷付かないように、包み込んでくれる役割のものじゃないかな、と俺なりに考えた。 「ぁ……いや……違うんです……晴彦さんにこんなに至近距離でおまんこ見られてるって思ったら、僕……」  愛液だ。これは決まりだ。彼方が俺に見られて恥ずかしくてうっかり溢れさせてしまった。  なんじゃそりゃ可愛すぎるだろ!?  己の化身がむくむく膨らんで、早く下着から出してくれって叫んでるのが聞こえるみたいだ。 「あぁぁぁ……くっそ……ごめん……大切にするって言ったばっかなのに、俺……勃起しちまってる……男の生理現象だけど、それにしたって、俺ってば最低だ……」  悲しさを通して虚しくなってきた。  でも彼方はそんな俺に引くこともなく、そっと手のひらを重ねてきた。 「いえ……僕……晴彦さんみたいな優しい人に処女をあげたかったなって思ったら……他人に簡単に身体を許したのをすごく後悔してます。僕の方こそ……ごめんなさい」  そんなの謝ることじゃないだろ。そいつらが全面的に悪いんだろ。こんなにも自責するような性格にさせた奴らが憎いくらいだ。  怒りを出さないように、華奢な彼方をぎゅっと抱き締めた。

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